公益財団法人日本国際連合協会主催 第63回「国際理解・国際協力のための全国中学生作文コンテスト」

今回、全国30都道府県より、応募総数2,255点のうち、予選通過作品53点が本選にすすみました。
そして、滋賀県からは大津市立仰木中学校 1年 打味 拓真さんの作文が、見事『銀賞』に選ばれましたのでご紹介いたします。
受賞おめでとうございます!

『銀賞』

本年はSDGsの中間年。2030年までに17の国際目標から成るSDGsを全て達成するために、日本ができることは何か。
「SDGsの目標達成に向けたプランクトン研究の将来性について」

   大津市立仰木中学校 1年 打味 拓真さん
     琵琶湖は滋賀に住んでいる私にとってとても身近な存在だ。「近畿の水がめ」と言われるように生活に欠かせない水源であるし、車に乗ればすぐに湖岸沿いを走ることができ、晴れた日にはキラキラした湖面に浮かぶ鳥や多くのヨットやボートを美しい景色とともに見ることができる。小学5年生の時には学習船「うみのこ」に乗り、航海しながら琵琶湖についての環境学習を行った。滋賀の小学生は皆この行事で琵琶湖の微生物や植物、魚など、多くを学ぶのだ。他にもアマゴやビワマス、ホンモロコ、コアユなど、琵琶湖に住む魚を食べる機会も多い。そして、私たち県民だけでなく、近隣の他府県の人たちにとってもバーベキューやキャンプを楽しむ場所として人気だ。
     私はこの夏に理科の宿題で琵琶湖のプランクトンについて調べた。そしてプランクトンがこの地球でとても重要な役割を果たしていることを知った。特に植物プランクトンは海洋の食物連鎖を支えているだけでなく、地球上の酸素の半分以上を生成している。光合成により二酸化炭素を吸収するため、地球温暖化を食い止める働きもある。また近年ではバイオ燃料として活用したり、栄養価の高い食料としても注目されており、植物プランクトンの研究開発は様々な分野で大きな可能性を秘めている。
     2023年のSDGs達成度調査で、日本は17の目標のうち特に深刻な課題があると評価された目標が5つあった。2030年までにすべて達成するのはどの国にとっても非常に困難だと予測されるが、いくつもの目標を達成するためのきっかけにプランクトン研究が活かされるのではと考えている。
     ディクラテリア・ルトゥンダという植物プランクトンが光合成して作る物質のなかに、石油と同じ炭化水素が含まれていることがわかっている。このディクラテリア属は北極海、太平洋、大西洋など色んな海に広く生息しており、普通の植物プランクトンで作られるバイオ燃料より効率が高く、自動車や航空機の燃料として利用できるほどだ。今後このバイオ燃料が化石燃料に代わっていけば、化石燃料の燃焼やCO2排出量が多く、その依存度が問題となっている日本で大きな助けとなるだろう。(SDGs13「気候変動に具体的な対策を」の目標達成に向けて)
     SDGs2の目標である「飢餓をゼロに」に関わる食糧問題にも、プランクトンが貢献できると思う。ミドリムシ(バイオ燃料にもなる)やナンノクロロプシスといった植物プランクトンは、アミノ酸やビタミン類が豊富なことからサプリメントとして流通している。琵琶湖には約500種以上のプランクトンが生息し、2002年には新種のオウミノシズクケイソウも発見されている。琵琶湖に限らず、日本中のどこかに燃料や食料になる未発見のプランクトンがいるかも知れない。
     海や湖の現象で有名な赤潮の原因となる富栄養化は、プランクトンの異常繁殖によるものだ。海や湖を美しく保つことは生態系を守ることでもあり、SDGs14の「海の豊さを守ろう」の目標達成にもつながるはずだ。
     このようにプランクトンにはSDGsの複数の目標を幅広く達成する可能性があると思う。日本がこれからこの研究開発に力を入れてバイオ技術がさらに発展すれば、日本だけでなく世界の環境問題を解決する大きな力となるだろう。SDGs達成のために、私自身も節水・節電など日常でできる取り組みはもちろん、滋賀のマザーレイクである琵琶湖の環境問題にこれからも関心を持ち続けたい。